■ 癌の新薬開発、RNA利用に注目 ■

癌の新薬開発、RNA利用に注目

 今年のノーベル医学生理学賞の受賞テーマとなった「RNA干渉」の応用が注目された。RNA干渉は、ひも状のRNA(リボ核酸)が2本結びついた「2重鎖RNA」を細胞内に入れると、入れたRNAの種類に応じて特定の遺伝子が働きを失う現象。がん細胞の遺伝子を抑え、副作用の少ない薬を作ろうと研究が進む
国立がんセンター研究所の落谷孝広がん転移研究室長は、RNAをがん細胞に送り込み、がんを抑える方法を示した。人間のがんを骨に転移させたマウスの尾に、がん細胞を増殖させる遺伝子を抑えるRNAを注射した。28日後、転移はほとんど消えた。抗がん剤が効かない乳がん細胞をマウスに移植し、抗がん剤耐性遺伝子を抑えるRNAを注射して、抗がん剤が効くようにする実験にも成功。今後、安全性などを確かめる。
東大医科学研究所の中村義一教授は、がん細胞に対する抗体をRNAで作る手法を紹介した。普通の抗体はたんぱく質でできており化学合成できない。生きた細胞に作らせているが高価で品質管理が難しかった。
中村さんたちは2000年、生体内にRNAと形がそっくりなたんぱく質があり、RNAに代わる働きをしていることを見つけた。この発見などから、逆にRNAで抗体の形を作る発想が生まれた。
RNAは化学合成でき、安くて良質のものを作りやすい。がん細胞の分子などへの結合力も通常の抗体より1000倍強いという。英国の企業は、すでに臨床試験を進めている。中村さんたちも、日本でベンチャー企業を作り、独自のRNA抗体作りなどを目指す。